桐夫のブログ 2007.06
始まりは新月
dr-kilio 2007/06/16 23:13:13
前のブログを閉鎖して、今日から新たにこのブログを始める。
前のブログが父親の旧友のT氏にばれてしまい、ちょっと関係がぎくしゃくしてしまったためだ。
昔から続く歯科医院のせいで、親子三代に渡って世話をしている患者さんもいる。
逆に、それが足かせになって、ブログさえも自由に書けないところもある。その意味では、非常に不自由だ。
休日なので、夕方から初夏の野菜のパスタを食べる。
夜、星がよく見える。新月のためだ。
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ネズミのミイラ
dr-kilio 2007/06/17 23:51:39
午前中に本棚の整理。
昔からの性分で、本の高さが揃っていないと気が済まない。できれば、背表紙の色も同じ系統で揃えたい。それでいて、本の内容もある程度分類されていなくてはいけないのだから始末が悪い。
歯のように、本も整然と規則性を持って並んでいてほしい。
白い背表紙が美しい本(自分ではかなり気に入っている)を5〜6冊つかんで引き抜くと、その裏でネズミがミイラ化しているのを発見する。この家は古いので、ネズミには困っていた。海外から取り寄せた殺鼠剤を置いたことがあったが、その成果かもしれない。
ぞっとするが、匂いもないため、意外にも素手で持つことができた。
私は、ネズミを素手でつかみ取り、本を元に戻した。
知り合いのYに頼んで、骨格標本にしてもらうことにする。
夕方Yが来訪。二人でネズミを持ったまま(もちろん箱には入れてある)中華を食べにいく。
私が注文した野菜中心のメニュー選びにYが怒って、自分用に肉料理を注文し、二人で笑い合う。
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注意力散漫
dr-kilio 2007/06/18 21:43:58
午前中から診察。
嫌な夢を見て、明け方に目が覚めてしまったため、少しぼんやりしている。昨日のネズミのせいか、あるいはYに無理矢理食べさせられたレバーのせいかもしれない。
口の中をのぞき込んで処置をする仕事は、患者と医師の信頼関係が必要。特にデリケートな治療の時は、患者の不安感が事故に繋がる可能性もある。
今日は少し虚ろだったためか、おびえた患者が口を閉じかけ、あやうく口内を傷つけてしまいそうになる。
チキンの入ったサラダ程度で食事を済ませる。
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説明会
dr-kilio 2007/06/19 21:35:02
今日も晴れ。先週14日に梅雨入りしたのに、このところ晴れてばかり。
来週の月曜日に予定されている刑務所での受刑者の治療の説明が行われる。
所内へ持ち込めるもの、持ち込めないもの、その申請などが説明され、注意事項が詳しく述べられる。
もし犯罪者の歯並びに共通性があれば、それは興味深い研究になるかもしれない。
最初の機会なので、まだ期待と不安が入り交じっている。
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28本の美しい歯
dr-kilio 2007/06/20 21:57:51
早番のため6時起床。
朝食はブラックコーヒーとトマト4片。
前回から矯正を始めた小学生のHくんの診察の日。彼の歯並びは、私の子供の頃の歯並びにとても似ている。
歯科医であった父に、歯医者の息子がそんな歯並びでは駄目だ、と言われ、金属製の矯正器具をつけさせられたのを思い出した。
当時の矯正器具は、今に比べて効率が悪かったため、何年間も装着していなくてはならなかった。歯が美しくなった時に、私は友だちを失っていた。
けれど、私は白い美しい歯並びになることを選択して正しかったと思う。28本の美しい歯は、私の誇りだ。
歯が美しくないことは、罪悪である、と私は思っている。
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F氏と夕食
dr-kilio 2007/06/21 22:07:58
朝から晴れ渡っており、気温がどんどん上がる。
どうも夏は苦手だ。生命力あふれる夏よりも、生命をかろうじて繋ぐ冬の季節の方が私は好きだ。
このような嗜好を述べると奇異な目で見る人も多いので、あまり口に出さないが。
夕方からは、B製薬営業のF氏と打ち合わせ、兼食事。
F氏は気さくな方で嫌いではないのだが、食事の時の噛み方が汚いため、テーブルを共にするのが苦痛でしかたない。
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歯鏡が見当たらない
dr-kilio 2007/06/22 20:45:34
朝、T線の架線事故で歯科助手が2名も遅れる。
そのせいで、朝から人手が足りない。
助手にまかせっきりの器具の置き場所がよくわからず、いつも使っている歯鏡が見当たらない。
危険な医療器具ではないので特に問題にするようなことではないが、別のものだと長さや角度が微妙に違っていて使いづらい。
梅雨入り宣言以来、久しぶりの雨で空気が澄み、夕方から気持ちがいい。
夕飯のエビのマリネが美味。五穀米に野菜スープ。
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ネズミの骨格標本
dr-kilio 2007/06/23 23:05:07
今日は午前の診療のみ。
歯槽膿漏の症状の重い患者が来院。その口臭に辟易するが、普段と違う歯鏡のために時間がかかる。
午後は診療が休みになるため、月曜日の刑務所診察の準備。
昨日見つからなかった歯鏡を助手に探してもらったが、見つからなかった。紛失したらしい。仕方なく別のものを用意する。
夕方に友人のYが来訪。先日のネズミの頭蓋骨の骨格標本を持ってくる。
なかなか美しい仕上がり。動物の歯並びを意識して見るのは初めてかもしれない。
本棚のJ.O.の画集の前に飾る。小さいが機能的な美しさを持つ頭蓋骨は、いつまで見ていても見飽きない。
しびれを切らしたYがワインを抜いたが、オリーブを少しだけもらってつき合った。
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静かな休日
dr-kilio 2007/06/24 23:15:37
時間があったので、I公園に出かける。気持ちが良かったのでつい長居をしてしまい、気がつくと夕方。
帰りの書店で、T.M.の新刊を買う。読みふけっているうちに夜になってしまう。
豆のスープで遅めの夕食。
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失敗した!
dr-kilio 2007/06/25 16:01:35
失敗した!
今日は、刑務所で受刑者の歯の診療の日だった。
何人もの人間を殺して服役していたあの女に会うまでは、いつもと変わりなく診察は進んでいた。
確かに、あの女には独特の空気があった。
受刑者の雰囲気に慣れ始めていた私は、少し油断していたのかもしれない。
女の口の中を見たとき、私は思わず驚きの声を上げてしまった。
けれど、驚かずにいられるだろうか。
その女の口の中には…、前歯の裏にもう1本、29本目の歯が生えていた。
上あごの二本の大きな前歯と平行に、隠れるように。
動揺した私は、もう一度確認しようと使い慣れない歯鏡の角度を変えたとき、つい指先を女の口の中に入れてしまった。
その瞬間だった。
女が私の指先に噛みついたのである!
指先に激痛が走り、思わず指を引き抜こうとしたが、女は顎の力を緩めようとはしなかった。
すぐに看守が駆け寄って女の口を開こうとした。
それでも彼女の力はゆるまない。
指を噛んだまま、女は私の目を見て笑い続けていた。
そして、心の奥まで覗き込むその目に吸い込まれるように、私は気を失った。
目が覚めると、所内の医務室に寝かされていた。指には包帯が巻かれていた。
「3列に6針ずつ縫った」と聞かされた。
3列・・・?
下の歯、上の歯、・・・そしてその裏の歯。
私は、上下の前歯と、その裏の歯で噛まれたのだ!
失敗した。
私は、取り返しのつかない失敗をしたような気がする…。
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38.3℃
dr-kilio 2007/06/27 17:46:21
昨日は高熱が出て、ブログが書けなかった。
今日もこれが精一杯だ。
38.3℃の熱。
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37.5℃
dr-kilio 2007/06/28 21:06:35
午後になって少し熱が下がる。いまは、37.5℃くらいで、ベッドからは起きあがれるようになった。
女に噛まれたため、何かのウイルスが入ったのだろうか。
少し横になることにする。
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37.2℃
dr-kilio 2007/06/29 17:15:56
昨夜は、何度も何度も同じ悪夢にうなされた。
私の歯がすべて抜け落ちる夢だ。
抜け落ちた歯で口の中はいっぱいになった。
そしてその歯を吐き出してしまうと、もう二度と歯が生えてこないような気がした。
それは私を恐怖と不安に駆りたてた。
熱は37.2℃くらいまで落ちる。
歯茎がうずく…。
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満月と不安
dr-kilio 2007/06/30 21:54:51
ようやく36.8℃まで熱が下がる。
体が軽くなったような気がして、窓を開けてみる。今日は満月だ。
見ているうちに、口の中に違和感を感じる。
歯茎の裏を舌で探った。
上の歯茎の真ん中、前歯の裏に、固いものが触れる。
私の指を噛んだまま笑い続けた女の顔を、思い出した。
