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鬼灯(ほおづき)の送り火



鬼灯の送り火

 

場所 法多山尊永寺 特設会場
期間 7月4日(土)〜9月27日(日)の土日祝、2026年8月10日(月)〜14日(金)
 
  
静岡 法多山 尊永寺でのお化け屋敷は今年で7回目。
  
死者が紛れる密やかな盆踊り。
編笠につけた赤いほおずきが揺れる。
  
法多山でしか味わえない、特別な恐怖体験をお楽しみください。


 
詳しくはout site「鬼灯(ほおづき)の送り火」公式ページをご確認ください

  

ストーリー

「ほおずき」は、漢字で「鬼灯」と書かれます。お盆の時の、迎え火や送り火に使われることがあるからです。
というのも、亡者は光を嫌うため、地域によってはお盆の送り迎えに、火の代わりとしてほおずきの赤い実を使うというのです。確かに、闇の中にぼうっと浮かぶ赤い実は、小さな灯火のように見えます。
 
山間にある村に、律子という娘がいました。裕福な家の一人娘として育ち、子供の頃から習い事に通い、中学を卒業すると町の学校で学んだ後、成人して村に帰ってきました。そのような育ちのせいなのか、戻ってきた村の暮らしは、時代遅れの貧相なものに感じられて仕方ありません。
ただ、そんな律子にとって、村で唯一心を惹かれるものがありました。武郎という、やはり名家の息子でした。
欲しいものは手に入れないと気が済まない律子は、両親に掛け合って、武郎の家に想いを伝えてもらうことにしました。名家同士ですから、両家ともこの話には大乗り気でした。
そのようにして、律子は望み通り、武郎と付き合うようになりました。
ところが、武郎は、少しも律子に心がなびきません。一年が過ぎた夏の頃、とうとう武郎は嫌気がさして、律子に別れを告げました。
 
武郎にとって、許嫁も同然のような律子と別れるのは、強い決意のいるものでした。実は、そんな武郎の気持ちを後押しするものがあったのです。
村には大きな祭りはありませんでしたが、盆踊りだけは盛んでした。その村の盆踊りには、他とは少々異なる特徴がありました。
踊る者は編笠を深く被って、顔を隠して踊るのです。
盆踊りは、お盆で帰ってきた死者と一緒に踊ると言われています。そこで、死者が紛れてもわからないようにするために、顔を隠して踊るという風習が生まれたのです。
盆踊りに参加した武郎は、その輪の中に特に美しい踊りをする一人の娘を見かけます。そして、たちまち彼女に心を奪われてしまいました。
けれど、顔を隠しているため、それが誰なのかわかりません。わからないとなると、ますます想いは強まっていきます。
盆踊りの最終日、この機を逃したらもう会えなくなると考えた武郎は、踊りながらそっと彼女に近づいて、その浴衣の袖に赤い糸のついた針を刺しました。
盆踊りがお開きになった後、武郎は多くの娘たちの中から袖の赤い糸を探しました。糸を見つけると、踊りの喧騒が残る中、彼女を追って行きました。
彼女は、村はずれの小さな家に入って行きました。
ほおずきっ子だ。
武郎は、すぐにわかりました。
その娘は、望まれない子供でした。当時、貧しかったその家で、妊娠中の母親は密かにほおづきの実を食べました。ほおずきは妊婦の体には毒で、お腹の子があの世に連れ去られると言われていました。貧しさから、母親は我が子を育てられないと考えたのです。
ところが、そんな母親の暗い望みとは裏腹に、お腹の子は無事生まれてきてしまいました。母親は自分の行いを深く悔やみ、その後、大切に育てました。
このような経緯から、その娘は「ほおづきっ子」と呼ばれるようになったのです。
ほおずきっ子は、しづ子という名前でした。
しづ子は、村の中ではあまり目立たぬようにひっそりと暮らしていました。そのためか、武郎も彼女の存在を気に掛けたことがありませんでした。
しかし、その踊りを目にしてから、武郎はすっかり彼女に心を奪われてしまいました。
さらにもう一つ、武郎がしづ子に惹かれた理由がありました。
武郎は逆子として生まれました。そのため、生まれてからしばらくは息をしていなかったと言います。
なんとか生き延びてくれと願った父親は、数珠を手に祈りを捧げます。その数珠が切れた時、武郎は窮地を出します。数珠のおかげで、命を長らえたのです。
しかし、武郎の心の中にはこんな思いが燻っていました。
「自分は、生まれないはずの子供だったかもしれない」
この思いが、しづ子への好意に拍車をかけていました。
まだ、律子との付き合いが続いている最中でしたが、武郎はしづ子に声をかけずにはいられませんでした。
しづ子は戸惑いながらも、やがて武郎に心惹かれるようになり、二人は恋仲になって行きました。
 
一年も経つうちに、律子の耳にも二人の噂が聞こえてくるようになりました。その話を聞いて、彼女の心が穏やかであるはずはありません。
「しづ子は村じゅうの男と付き合っている」
そんな根も葉もない噂を立て、武郎の家に伝わるように仕向けました。その話を聞いた、武郎の両親は激怒します。
「折角、律子との良い縁談を、尻軽女に崩された」
しづ子と武郎の関係は、両家の許さぬ仲になって行きました。
けれど、それは二人の仲を一層深めることになっていきます。二人は、山の中にある壊れかけた小屋の壁の破れ目を使って手紙のやり取りをするようになりました。赤い紙に手紙を書いて壁の破れ目に入れると、相手がそれを読み、返事を書いてまた壁に入れるのです。風などで飛んでいかないように、中に数珠の玉を一つ入れ、巾着状に絞った赤い手紙は、まるでほおずきのようでした。
 
そんな折、再び、盆踊りの季節が巡ってきました。
「ほおずきっ子になど、負けるわけがない」
盆踊りなど田舎臭いと馬鹿にしていた律子でしたが、自分の踊りでしづ子の鼻を明かして、もう一度武郎を振り向かせてみせる、と意気込みました。
踊りなら、幼い頃から習っていたので、自信がありました。律子は、編笠と浴衣を特注し、盆踊りの輪に加わりました。
確かに、その踊りは人々の目を惹く優雅なものでした。けれど、武郎の目には入りません。
翌日も、またその翌日も踊りますが、武郎の目にはしづ子しか映っていません。
いよいよ翌日に盆踊りの最終日を控えた夜、律子は盆踊りの後、武郎が声をかけてくれるのを待ちます。けれど、武郎は律子の前を通り過ぎてしまいます。悔しくてその後ろ姿を目で追うと、なぜか山の中に入っていきます。
追いかけた律子は、武郎が小屋の壁の中に手紙を隠すのを目撃します。
武郎が立ち去った後、その手紙を取り出した律子は、そこに書かれていた内容に驚きます。
「もう一緒になるしかありません。しづ子さんも同じ気持ちなら、明日の盆踊りで編笠にほおずきをつけて踊ってください」
けれど、律子はその手紙から、一つの企みを思いつきました。
編笠を盗めば、明日の盆踊りにしづ子は出られない。代わりに、その編笠を被って、私が踊ってやろう。そうすれば、武郎さんはきっと私の踊りに目を奪われて、心変わりするにちがいない。
律子は、そう考えて、しづ子の軒先から編笠を盗みました。
 
翌日は、その夏最後の盆踊りです。
終わったら、送り火で霊をあの世に還さないといけません。
律子は、盗んだ編笠にほおずきをつけて、輪の中で踊っていました。編笠をなくしたしづ子は、踊ることもできません。そこに、思ったとおり、武郎が近づいてきました。
「終わったらついてきて」
そう言うと、自分の編笠についているほおずきを指さしました。
律子の胸が高鳴りました。
やがて、お囃子が終わり、盆踊りの幕が閉じました。
律子は、さんざめく人混みの中、ほおずきの編笠を探します。それはすぐに見つかりました。ほおずきは、闇の中で赤い灯火のように光っていたからです。
ほおずきは人混みを逃れ、山の方に入って行きます。見失わないように、律子はそれを追い、どんどん山に分け入って行きます。
どのくらい歩いたでしょう。ほおずきがぴたりと止まりました。律子は、荒い息でそれに追いつきます。
武郎が自分の方を振り向きました。律子は、今こそ編笠をとって、自分の正体を明かす時だと、顎紐に指をかけかけました。
その時、武郎が手を差し出しました。
「さあ、取って」
言われるままに受け取ったそれは、赤い和紙に小さく包まれていました。
まるで、ほおずきみたい。
そう思った時、武郎が自分の手に残った、もう一つの包みを解いて言いました。
「これで一緒になれる。先に行っているから」
次の瞬間、武郎は赤い包みの中の粉を口の中に入れました。
驚いた律子は、思わず駆け寄って声をかけました。
「武郎さん!」
その声に、武郎は驚いたように目を見開きました。
「お前は……?」
律子は編笠を取りました。
「律子……」
しかし、その直後、見開いた目は苦悶に変わり、武郎は喉を掻きむしり始めました。赤い包みの中身は、心中のために用意した毒薬だったのです。武郎は、助けを求めるように手を伸ばします。
それを握ろうとした手を、武郎が払いました。
「お前じゃない……!」
その声に含まれた冷たさに、律子は思わず、伸ばした手を下げました。
怒りを孕んだ武郎の目が、律子を睨みます。が、それも長くは続きません。武郎はもう、息をすることさえままならなくなっていたのです。
律子は、自分の手に握らされたほおずきに似た赤い包みを、地面に叩きつけました。
「地獄へ堕ちろ」
そう吐き捨てると、倒れた武郎に背を向けて山を降りました。
武郎がしづ子に言っていた「一緒になる」ということは、あの世で一緒になるということだったのです。ほおずきの送り火と一緒に、二人であの世へと旅立って行こうとしていたのでした。
律子は、「ちくしょう。ちくしょう」と呟きながら山道を降りて、家に帰りました。
 
その晩から、武郎がいなくなった、と村では大騒ぎです。
山に入っていく姿を見たと言う者がいて、山を捜索したところ、武郎の遺体が見つかりました。
一方、武郎と心中できず、武郎だけを死なせてしまったしづ子は悔しくてたまりません。
編笠を盗んで陥れたのは、きっと良からぬ噂を吹聴していた律子のせいだ、と考えたしづ子は、彼女の家を訪れて問いただします。
しかし、律子は薄笑いを浮かべてしらばっくれます。その挙げ句に、武郎としづ子の関係を嘲笑ってきます。
怒りに火のついたしづ子は、思わず律子に手を伸ばし、その首を強く絞めてしまいます。息をしなくなった律子を目の前にして、しづ子は激しく苦悶します。
「もう生きていられない」
しづ子は川に身を投げて、自ら命を断ちました。
 
それ以来、夜ごと、編笠を盗んだ者を探して、しづ子の霊が徘徊すると言われています。幽かにお囃子が聞こえてくる夜、村では誰もが戸を閉ざします。それは、編笠を被った霊が自分を陥れた者を探す兆しだからです。

概要

タイトル 鬼灯(ほおづき)の送り火
URL out site「鬼灯(ほおづき)の送り火」公式ページ
場 所 法多山尊永寺 特設会場 〒437-0032 静岡県袋井市豊沢2777
期 間 7月4日(土)〜9月27日(日)の土日祝、2026年8月10日(月)〜14日(金)
料 金 大人2300円 小中高1800円
所要時間 約30分


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